定期借家データベース

Ⅵ.建替え・リニューアルのため定期借家を使用する

10 建替え時期までの跡貸し営業に使用。

当社が丸の内の再構築を進めていくに際し、建替えが決定したビルにおいては、約2年間の移転交渉期間を設けているが、移転に協力いただけた場合の当該区画については、従来型賃貸借契約の下では居座りのリスクを考慮して、空区画を貸し出すことができず、1年以上も空室のままとせざるを得ないケースがほとんどであった。しかしながら定期借家制度が施行された現在は、当該空室区画の有効活用を図るべく、周辺再開発の建築現場事務所として、建替え(閉館)時期までの期間限定での貸付を行うことができ、同制度を効果的に活用している。

建替え・取り壊しを検討している建物をテナントに貸す場合、普通借家契約で賃貸すると、建物の取り壊し時にテナントが貸室を明渡してくれない、あるいは明渡しに多額の費用を要する、というおそれがあり、新規に賃貸するのは躊躇されることも多かった。
そういった建物についても、定期借家を用いることにより、賃貸借期間終了時の明渡を確保したうえで賃貸し、資産の有効活用ができるようになった。

一つの事例として、現在、新橋・虎ノ門地区において環状2号線計画が計画されており、その計画地内にあるビルについては、取り壊し時期までの期間で、定期借家により賃貸を行い、収益を確保している。

なお、テナントに対しては、あらかじめ貸室が再開発計画地内にあるため、将来計画が実施されビルの取り壊しが必要となることを説明するとともに、賃貸借契約書にも再開発計画の概要を記載している。

11 契約終了時期を統一して、一括リニューアルでショッピングセンターの競争力を保持。

ショッピングセンターにとっては最終顧客である消費者の基本的なニーズに応えるとともに常に新鮮な楽しさや驚きを提供できる魅力的な店揃え、品揃えを確保することが長い目で見ると重要になる。このためには定期的にリニューアルを行い、施設のアップグレードやテナントの一部入替え、出店箇所の移動を行う必要がある。この意味でショッピングセンターのリニューアルは貸主であるデベロッパーにとってもテナントである各店舗にとっても、総論としては必要な事柄だったが、従来の借地借家法上はデベロッパー、各テナント双方の各論の調整に相当の手間を要する業務となっていた。
現在、定期借家制度の導入により、例えば5年後のリニューアルを想定して、全テナントの契約終了時期を合わせておくことが可能になった。これにより貸主側にとってはリニューアル時の個別テナントとの賃貸借契約終了の交渉がなくなる。テナントにとっては次のリニューアル時期を前提に、自らの投資や人員体制を主体的に計画し実行することができる。またリニューアルの結果、常にショッピングセンターが競争力を持ち、魅力的であるということは消費者にとっても、テナントである各店舗にとってもデベロッパーにとっても望ましいことは言うまでもない。

当社ではショッピングセンターのリニューアルへの活用、1年以下の催事テナント契約への活用等、定期借家契約を積極的に商業分野に利用している。