- Q7定期借家契約においても、礼金、保証金は受領できるのですか?
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A7
①「礼金」は、「敷金」とは異なり、契約終了時に返還されない一時金であり、通常、賃料の数カ月分程度が支払われます。「礼金」の授受は、更新が原則である普通借家(正当事由借家)契約における慣行であり、必ず支払われるものではありませんが、支払われるときは礼金が立ち退きの際のトラブルや金銭出費を事前に償う機能をもっていました。
定期借家契約においては、立退きの際に「立退料」を支払う必要がないので、「礼金」の授受の意味は小さくなりました。国土交通省住宅局策定の「定期賃貸住宅標準契約書」でも、「礼金」の記載欄はありません。
②「保証金」は、一般的には「敷金」と同じ意味で使われており、借主の賃料不払いなどの債務不履行に備えて貸主が預かっておく金銭です(預り金)。定期借家においても借主の賃料不払いなどの債務不履行は起こりうるのですから、一定額の保証金を預かっておくことは許されますし、合理的です。
③関西などでは、借主の入居時に「保証金」という名称の金銭を貸主に預け入れ、明渡し時において、借主の未精算の債務の有無にかかわらず、一定額は返還しないという慣習が行なわれています。この一定額が「敷引額」であり、実質的には上記①の礼金と同等の役割を果たしています(後払いの「礼金」ともいえるかも知れません)。また、借主に賃料の不払いなどの債務があれば、その分は保証金(性質は敷金)から差し引かれることになります。「敷引」も礼金と同様、貸主と借主の合意があれば定期借家契約においても行なうことが可能ですが、やはり定期借家契約においては、その実質的意義が小さくなりました。