「定期借家」契約の成立

2.「定期借家」契約の成立

定期借家契約」を締結するためには、次の要件を満たす必要があります。この要件を満たさないと定期借家契約とはいえず、従来型の普通借家契約として扱われます。

1.建物賃貸借について一定の契約期間を定めること

定期借家では、当事者が一定の賃貸借期間を定めることが必要です。例えば建物を「2年間に限って賃貸借する」というようにです。なお、不確定な期限を定めても、定期借家契約を締結することはできません。「賃借人が死亡するまで」等の期限がこれにあたります。

2.契約の更新がないこととする旨の特約を定めること

「契約の更新がないこととする」という特約を当事者が結ぶことが必要です。国土交通省住宅局策定の定期賃貸住宅標準契約書には以下の条項が盛り込まれています。

第2条2項

本契約は、前項に規定する期間の満了により終了し、更新がない。ただし、甲及び乙は、協議の上、本契約の期間の満了の日の翌日を始期とする新たな賃貸借契約をすることができる。

3.公正証書等の書面により契約をすること

定期借家契約は、公正証書等の書面で契約をする必要があります。なお、公正証書は例示としてあげられているだけですので、公正証書によらなくとも、一般の書面による契約であれば、定期借家契約を締結できます。

4.契約の前に、賃貸人が、賃借人に対し、定期借家契約である旨を記載した書面を交付して説明すること

定期借家契約をしようとするときは、賃貸人は、あらかじめ、賃借人に対し、この賃貸借は更新がなく、期間の満了により契約が終了する旨を記載した書面を交付して説明しなければならないとされています。そして、賃貸人がこの義務を怠った場合には、たとえ契約書に更新をしないと定めていても、その特約部分は無効とされ、従来型の普通借家契約と扱われることになります。なお、一般的に、宅地建物取引業者等が賃貸人と賃借人を仲介することが多いと思われますが、仲介者が単に仲介者としての立場で説明等を行なっても、この義務は履行されたことにはなりません。本来賃貸人が負う義務だからです。しかし、仲介者が、賃貸人からこうした義務を履行する代理権を授与された上、代理人として賃借人に説明等をする場合には、賃貸人の義務は履行されたことになるものと解されます。