定期借家の活用事例をご紹介します。
1.資産を有効に活用
(1)建て替えを計画しているアパート・マンションの空室を貸したい
建て替えを計画しているアパート・マンションでは、新規で入居募集を停止し、全ての入居者が退去するのを待つことになります。一部の入居者が退去を拒否し、居座られた場合には、建て替えまでに長期間を要することもあります。
定期借家なら、入居者が立ち退くまでの期間、他の空き室を有効に活用することができます。
(2)転勤の間の留守宅を貸したい
転勤の間の数年間、使用しない持ち家を貸し出すいわゆる「リロケーション」でも定期借家を活用すればスムーズです。
定期借家なら、転勤の間の留守宅を一定期間に限定して貸し出すことができます。
(3)売却予定の持ち家を短期で貸したい
売却の予定はあるが、慌てて売却するつもりがない(条件に合った買主をじっくり探したい)という持ち家住宅も、定期借家なら、売却までの一定期間に限って貸し出すことができます。
(4)別荘・セカンドハウスの未使用期間を短期で貸したい
別荘やセカンドハウスの未使用期間でも、定期借家により期間限定で貸し出すことができます。
(5)相続した空き家を貸し出したい
相続した空き家には仏壇等の家財も残されており、愛着があってなかなか売却に踏み切れないものです。一方、空き家を賃貸に出すにも普通借家では返してもらえない不安があり躊躇する向きもあります。定期借家なら一定期間に限って貸し出すことができるので、相続した空き家から収益を得ることも可能です。
2.リスクヘッジのための活用
(1)良好な居住環境を保ちたい
賃貸住宅の経営には、家賃滞納や居住ルールを守らない借主の存在等のリスクがどうしてもあります。定期借家では、家賃滞納や契約を守らない借主とは再契約をしないことで、良好な居住環境を保つことができます。
(2)住宅を借りにくい方に貸す
高齢者、高齢者、体の不自由な方、母子家庭、生活保護を受けている方など、住宅を借りにくい方(住宅確保要配慮者)への賃貸でも、定期借家ならリスクを考慮しながら貸し出すことができます。
(3)外国人向け賃貸住宅として貸す
生活習慣の違い等により連帯保証人を付けにくい外国人の借主にも、定期借家が有効です。
3.問題解決のための活用
(1)再開発で共同化を促進したい
都心部の木造住宅の密集地域では、防災面でも土地の有効活用の面でも、不燃化、共同化が求められますが、共同化に向けた話し合いを進め、せっかく合意ができても、アパートや借家等が多いと建て替え等の実行時期を合わせるのが大変です。
定期借家を活用すれば、契約の終期を調整できますので、普通借家契約に比べて再開発における共同化がスムーズになる可能性が高まります。
(2)高齢者世帯の一戸建から住み替えたい
子供が独立し、広すぎる自宅を持て余している高齢者世帯でも、自宅を売却せずに一定期間貸し出し、自分たちは交通の便が良い賃貸住宅に住み替える、といったことも比較的スムーズにできます。
(一社)移住住みかえ支援機構(JTI)が実施する「マイホーム借上げ制度」は、定期借家制度を活用し、シニアの皆さま(50歳以上)のマイホームを借上げて転貸し、安定した賃料収入を保証するものです。これにより自宅を売却することなく、住みかえや老後の資金として活用することができます。
( ホームページ:https://www.jt-i.jp/index.html)
(3)自宅の建て直し・移転中の仮住まい先として貸す
自宅の建て直しや移転中の短い期間、仮住まい先を探している方にとっても定期借家が有効です。建て直しや移転の間の短期間に限定して貸し出すことができます。
4.将来に備えるための活用
(1)大規模修繕、居室の改修等をスムーズに進めたい
アパートを長期にわたって安定的に経営するためには、定期的な改修等が不可欠ですが、入居者がいる状態では居室内の改修等が思い通り進まないことがあります。
定期借家なら、契約期間を調整し、期間満了時期をそろえることができますので、大規模修繕や定期改修等をスムーズに進めることができます。
(2)近い将来、親族(子供等)が住む予定の持ち家を貸したい
現状は空き家ですが、近い将来、親族(子供等)が住む予定となっている持ち家でも、定期借家なら契約期間を自由に調整できるなど、柔軟な貸し方に対応できます。
(3)売却を控えた社宅を貸し出したい
法人が所有する寮や社宅などでは、住んでいる従業員を一斉に強制的に追い出すわけにもいかず、全員が移転するまで時間がかかることが多いようです。定期借家を活用すれば、全員が移転するまでの一定期間、外部に賃貸できれば収益を生み出すことも可能です。
5.一歩進んだ活用
(1)マンスリーマンションとして貸し出したいい
賃貸マンションを月単位で貸し出す、いわゆるマンスリーマンションでも、定期借家が有効です。普通借家では1年未満の契約期間を定めても期間の定めのない契約とみなされてしまいますが、定期借家なら1年未満の契約を定めることも可能です。
(2)学生向けに一定期間貸し出したい
学生向けに、例えば大学卒業までの4年間に限って貸し出すことも定期借家なら可能です。また、退去時期があらかじめ予測できるため、次の入居募集を早めに始めることができるというメリットもあります。
(3)中古住宅の購入前お試し入居をしたい
中古住宅の購入者は、その住宅に雨漏りや水回りのトラブル等がないか不安になるものです。購入前にその住宅を短期で借りて不安を取り除いてから購入する、いわゆる「お試し入居」といった方法も、定期借家を活用すれば柔軟に対応できます。
(4)ペット可住宅として貸したい
ペット可の賃貸住宅では、管理規約やペット飼育規約などの居住ルールを守っていただけないと、居住環境を良好な状態に保つとこができなくなる上、物件の劣化が早まる恐れもあります。定期借家で、管理規約やペット飼育規約を守らない借主とは再契約しないことにすれば、良好な居住環境等を保つことも可能です。
(5)シェアハウス・ゲストハウスとして貸したい
借主が設備等を共同使用するシェアハウス・ゲストハウスでは、借主全員がマナーやルールを守っていただかなければなりません。定期借家なら、施設等の使用方法等を守っていただけない借主と再契約をしないことで、良好なコミュニティづくりに役立てることができます。
(6)女性向け賃貸住宅として貸したい
安全・安心に暮らせることをはじめ、外観・間取り・設備仕様・インテリア等に工夫を凝らした女性向け賃貸住宅も、定期借家がお役に立ちます。
(7)デイサービス・グループホームとして貸したい
地方の空き家対策に、デイサービス施設やグループホーム施設として長期の定期借家を締結し、眠った資産を有効活用することもひとつの方法です。